鉄道は多くの人が利用する交通手段であり、その安全性は非常に重要です。
近年、鉄道車両においては火災リスクへの対策が求められています。火災が発生すると、乗客や乗務員の命が危険にさらされるだけでなく、車両や駅の設備にも大きな損害が出る可能性があります。そのため、鉄道車両の製作にあたっては、配線の識別や管理がとても大切です。
その識別と管理を容易にするために用いる配線識別標示材が「ハロゲンフリーチューブ」です。
線番や識別番号等を印字し、電線に通して使用します。今回は、鉄道車両にぴったりな性能を兼ね備えているハロゲンフリーチューブについて簡単にご紹介します。
[ハロゲンフリーチューブについて動画で確認する]
目次
1. 鉄道車両向けハロゲンフリーチューブとは?
2. 人と環境に優しい特徴を持ったチューブ
3. 鉄道車両の課題
4. まとめ
1. 鉄道車両向けハロゲンフリーチューブとは?
ハロゲンフリーチューブは、鉄道車両の配線を識別するために特別に開発された配線標示材です。
通常のマーカーチューブと同じように、しっかりとした印字性能を持っています。
最も大きな違いは、火災が発生したときに有害なガスを発生しないという点です。
マーカーチューブの材質は、塩化ビニルです。焼却すると有毒な塩化水素ガスやダイオキシンを発生します。
もし、火災等が発生した場合 人体や環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。
一方、ハロゲンフリーチューブの材質は ポリオレフィン系樹脂を主成分 とする混合物です。
有害なガスを発生しないのはもちろんのこと、比較的リサイクルが容易です。
【ハロゲンフリーチューブの仕様】
材質 | ポリオレフィン系 |
耐熱温度 | 80℃ |
環境対応 | RoHS対応、ハロゲンフリー |
サイズ | 一覧表はこちら。 ジャストサイズ製作可能。ご希望サイズがない場合はお気軽にお申し付けください。 |
色 | アイボリー(標準色)、白、赤、青、緑、黒 |
印字 | 可能 |
購入ロット | 在庫分は1巻~、または印字カット品1袋(100個)~ |
2. 人と環境に優しい特徴を持ったハロゲンフリーチューブ
POINT① ハロゲンを含まない
名前の通りハロゲンを使用せずに作られています。
ハロゲンは、火災時に非常に有毒なガスを放出することが広く知られています。
それを含まないハロゲンフリーチューブは、火災時に発生する有害ガスを防ぐことができるため、乗客や乗務員の安全を確保できます。
POINT② 難燃性試験に合格
ハロゲンフリーチューブは「車材燃試試験18-1099K」において 難燃性 を取得しています。 これは、火が燃え広がりにくい材料であることを証明する試験です。 この試験に合格していることは、ハロゲンフリーチューブが火災発生時にも安全に使用できるという強い証拠です。
また、国土交通省の鉄道技術基準(第83条 第3項)では、「旅客車の車体は、予想される火災の発生および延焼を防ぐことができる構造および材質でなければならない。」と規定されています。解釈基準においても、部位ごとに燃焼性(不燃性、極難燃性、難燃性)が定められています。
鉄道車両における耐火性はとても重要な要素であり、ハロゲンフリーチューブはこの基準を満たしているため、安全性が高いと言えます。
ちなみに ハロゲンフリーチューブ は、標準色とそれ以外で 評価が異なります。
色 | 型式 | 評価 |
---|---|---|
アイボリー(標準色) | KET-100 | 難燃性 |
白 | KET-101 | 極難燃性 |
車材燃試試験18-1099Kとは
主に鉄道車両やその他の輸送機関で使用される材料の難燃性を評価するための試験です。
この試験は、材料が火災発生時にどのように変化するか、また、火が広がるリスクを低減するために重要な基準を表しています。
・火災安全性の確認: 鉄道車両などの輸送機関に使用される材料が、火災発生時に安全であることを確認するために行います。特に、火災の発生や拡大を防ぎ、乗客や乗務員の安全を確保することが目的です。
・有毒ガスの評価: 材料が燃焼した際に発生する有毒ガスの量や種類を測定し、健康リスクを評価します。
▶試験詳細は 日本鉄道車両機械技術協会 HP にて
豆知識
EU(欧州)では、最も規制が厳しく日本とアメリカがこれに準じている形となっています。細かい基準が設けられている欧州では、全体的な要求度が高くなっています。
・EU(欧州連合) : EN 45545-2という鉄道用の火災安全基準があり、世界で最も厳格な火災安全基準の一つとして知られています。材料の難燃性、発煙性、有毒ガスの発生量について詳細な試験基準が設けられており、NFPA 130と同様、火災発生時の煙や有毒ガスの発生量を抑えることを重視しています。特に地下鉄など密閉空間での火災リスクを考慮しており、材料の燃焼性や煙の発生、有害物質の排出に関する厳しい規定が設けられています。また、RoHS指令(有害物質の使用制限)やREACH規則(化学物質の安全性規制)によって、材料の安全性と環境影響に関して厳しい管理が行われています。
・米国:米国ではNFPA 130(National Fire Protection Association 130)等鉄道車両の火災安全基準となっており、材料の難燃性、発煙性、有毒ガスの抑制に対する基準が厳格です。
・日本:鉄道技術基準(第83条 第3項)「火災の発生および延焼を防ぐ構造および材質であること」が求められており、材料には難燃性や不燃性が求められます。しかし、米国や欧州と比較すると、発煙性や有毒ガスの発生についての基準は明確には定められていません。日本では、地震対策や安全性の高さが特に重視されるため、火災対策については、NFPA 130やEN 45545-2ほど詳細な規定がない傾向にあります。
3. 鉄道車両の課題
・ 配線の識別が不十分だと、保守作業や修理が困難になり、さらには事故の原因にもなる
・ 火災のリスクを考慮した素材選び
このような課題を解決できるのが ハロゲンフリーチューブ です。
印字による線番標記OK + 人と環境に優しい
ハロゲンフリーチューブを付けることで、配線の線番を明確に標示し識別できるだけでなく、安全性も確保できるため、鉄道業界での需要が高まっています。また、SDGs推進の世界的動向により、環境への配慮は今後ますます強化が見込まれます。
4. まとめ
ハロゲンフリーチューブは、鉄道車両での配線識別をしやすくし、火災時の有害ガス発生を防ぐ安全な製品です。
難燃性試験にも合格しており、安全性が証明されています。鉄道車両の安全性を高めるために、信頼できる配線標示材としてハロゲンフリーチューブの導入をぜひご検討ください。
未来の鉄道をより安全にする一歩を踏み出しましょう。